薪のストッカー
すぐに使う薪の置き場を考える
これから薪ストーブを導入しようと考えている人の多くは、24時間連続運転をして家中を暖めたいと願っています。家の中心に設置すれば放射熱の伝播力はとても効率が良いでしょう。しかし、家の隅々にまで——洗面所やトイレ、二階の寝室、玄関の床など——薪ストーブの暖房力で暖めるためには、熱の対流を考えた家の設計も必要となります。そして、さまざまな条件をクリアすると現実的にはリビングの隅に置かれることが多い薪ストーブ。この場所でもうまく暖気を対流させることができれば全館暖房が可能となります。
さて、晴れて薪ストーブによる全館暖房を手に入れたとしましょう。次に考えるべきは、燃料となる薪の置き場です。ここで言う薪の置き場とは、薪を乾燥させるための薪小屋や薪棚とは異なり、薪ストーブの近くで出番を待つ薪たちを置いておく場所のことです。条件によっては薪小屋や薪棚から直接持って入る場合もあるでしょうが、持ち運ぶまでの距離はそれなりに遠くなるし、薪ストーブのトップシーズンである真冬は降雪によって外での作業に時間がかかり、せっかく暖まった身体が冷えてしまっては本末転倒です。
そこで、乾燥させた薪をどこで出番を待たせるかを考えてみましょう。
炉台にストックする
炉台には耐火面と意匠、そして木くずや灰の飛び散りをこのエリア内で完結するようなサイズが求められています。さらに設計によってはここに薪を置くスペースを作る場合があります。すぐに使う薪であれば問題ありませんが、薪ストーブからあまりに近いと心理的にも良くないので、許される範囲で大きな炉台を作るようにしたいものです。ここに薪置き場を作れるのなら、薪から必ず出る木くずの心配も無用です。また、炉台には着火用の細い枝などのストック、雨や雪で濡れてしまった近いうちに使う乾燥薪なども臨時に置いておけるスペースがあると重宝します。薪ストーブクッキングを楽しみたい方はダッチオーブンや燃焼室内で使う五徳等を置くスペースのことも考慮しましょう。
炉台の周りに置く
例えばキャスター付きのカートなどを利用すれば、1〜2日分の薪をストックすることができます。ただし、日本の場合は外と室内とを行き来するカートを使う気にはなれませんから、外専用、室内専用のカートをそれぞれ用意すると良いでしょう。炉台に余裕が取れない場合は着火関係の物品もその周りに置くことになるので、ストーブ周りはあらかじめ余裕をもたせて計画しましょう。
薪小屋と薪ストーブまでに中継基地を作る
一般的に、薪は2年間乾燥させるのが理想と言われていますから、年間に4トン使うとすると8トン分を収納できる薪小屋を作らなければいけないことになります。薪小屋は家に沿わせて設置する場合もありますが、大型の薪小屋の場合、塀や生け垣に沿わせて独立させて作る方が多いようです。そうなると薪ストーブまでの距離が遠くなってしまい、一日分の薪だけでも何往復もしなければなりません。そんなときは、一週間分程度の薪をストックできる小さな薪棚を家に沿わせて設置すると良いでしょう。天気の良いときに薪小屋から一週間分を運んでおけば、寒い夜や吹雪の中に薪小屋まで行かなくても済むわけです。さらに雨雪から逃れるために庇を広くとれるように設計するのも一案です。
また、もう一歩進んで中継基地専用のドアを設けるというアイデアもあります。炉台近くに小さな扉を作れば、土間や玄関などからショートカットして運び込むことができます。薪は玄関や勝手口から運び入れるのが一般的ですが、これだと直接薪ストーブの横に置くことができて、木くずなどで部屋を掃除する心配も長い距離を運ぶ労力も不要です。