超絶ローエミッション
米国で欧州製の薪ストーブの販売が許可されるためには、少なくともアメリカ環境保護庁(EPA)が規定する排気ガスや燃焼に関する規制をクリアしなければならない。欧州で立派な数値を出している薪ストーブであれば難なくクリアできるか、というと簡単なことではない。たとえ欧州の規制であるEN13240をクリアしていても意味を持たない。EPAもENも目指すところは同じクリーンな排気という山の頂上なのだが、アプローチ法が異なったり、重視している環境基準の項目が異なったりしているから、お互い同士翻訳できないのが現状だ。ENは一酸化炭素の排出量を重視し、EPAは大気へ放出する粒子状物質(PM;Particulate matter)を重視する。
そこでライスは、北米向けにPM低減対策に乗り出した。現在のEPAの基準は4.5g/時。これでもかなり厳しい数値なのだが、2020年からさらに厳しくなることがわかっていて、製材された木材で2.0g/時、一般的な薪で2.5g/時になる。なんと半分以下に抑えなければならない。
ライスはどう乗りきったか。燃焼経路の根本的見直しは当然で、給気/排気/燃焼のバランスを表すλ ラムダ フックに関しても考え直したに違いないが、現段階ではその改良点は見た目でしかわからない。ドアを開いてバッフル板を見ると、一般的なバーミキュライト製のそれよりも明らかに厚みがある。よく見ると上下2枚になっていて、その合わせ部にいくつかの通気口が見える。ここまで多孔のバッフル板は見たことがなく、おそらくこれがPM対策であろうことはすぐに予想がつく。
欧州向けのQ-TEE2では、バックプレートとバッフル板の間にCB孔が一列に控えめに設けられていたが、クラシックUSはバックプレート上部に上下二段でCB孔が開けられている。さらにバックプレート中央部にも大きめのCB孔が一つ見える。そして例のバッフル板の先端のCB孔だ。欧州モデルに比べて2倍以上のCB孔が開けられ、燃焼室内で徹底的に粒子状物質を燃え尽くさせる、というシステムだ。このシステムによって出た結果が1時間あたりの排気煙量0.9gという驚くべき数値だった。この数値はEPAの非触媒2018年ランキングにおいてNo.1を記録した。おそらく今後EPA基準がさらに厳しくなったとしても同機のシステム見直しは不要であろう。
詳しくは薪ストーブライフNo.35をご覧ください。