ハーゼ・カミンオーフェンバウ Sendai175

Sendai175 ハーゼ

炎の観賞と蓄熱と:Sendai(仙台)を冠する薪ストーブは超モダンながら実力派

わが国に輸入されている欧州製薪ストーブは、20年前も今も鋳鉄製が中心である。ところが、実際にはデンマークなどのコンテンポラリータイプの薪ストーブが登場すると、雪崩を打つように鋳鉄製から鋼板製に移っていった。その理由の一つに、クラシックタイプから脱皮し、モダンなデザインの薪ストーブが世に出始めたことが挙げられる。“現代的な薪ストーブ”というと多くの人が縦長タイプをイメージするだろう。現代的なスタイリッシュさを具現化するには、鋼板を用いるしかない。無論、鋳鉄にもメリットは多くあるが、ある程度の厚みを必要とするため見た目に“重さ”を感じてしまう。鋼板も重量に関しては大差ないのだが、シャープなデザインは鋼板に軍配が上がる。
そして、鋼板が流行しているもう一つの理由が機能上の問題である。薪ストーブは一見完全密閉されているようだが実はそうではなく、プレートとプレートの継ぎ目やドアと本体の間などはガスケットで密閉性を高めている。外側のエンクロージャー部分はまだしも、燃焼室は密閉性を高めなければ本体の温度や燃焼効率の低下だけでなく、一酸化炭素を含んだ燃焼空気が室内に漏れ出す恐れもある。それを解決するのが燃焼室プレートの溶接である。これによって燃焼効率を上げるのである。それには鋼板は欠かせない。
では、鋼板製でクラシカルデザインのモデルという選択肢もあるのかというと、性能的な面で縦長燃焼室が有利である。わが国では「クリーンバーン」「二次燃焼」という言葉が一人歩きし、その先に行けないでいる。熱せられて薪から発生するガスに引火することを一次燃焼とすると、そこで燃え切れなかった不純物を含んだ可燃性ガスを燃やすための装置が一般にクリーンバーンと言われている。ところがクリーンバーン装置は実際にはさまざまな手法があり、それぞれに名が付けられているわけではない。逆に言えば便宜上再燃焼をさせる方法に名前を付けてわかりやすくしているのが現状だ。
ドイツの薪ストーブメーカーであるハーゼの再燃焼装置も名前などなく、輸入元である青い空が“スタグネイション・バーン(stagnation burning)”と名付けた。可燃性物質を含んだ排気がスムーズに煙突に導かれないように停滞させ、そこに新鮮な空気を送り込んで燃焼させる、というシステムのことである。ハーゼ・カミンオーフェンバウ(HASEKAMINOFENBAU GmbH:以下ハーゼと略)はドイツ国内にあっては高価格帯・低価格帯に偏らない平均的な薪ストーブメーカーである。ただし、平均的とは価格帯のことであって、製品の出来は一流でありドイツ国内の権威ある商品テスト財団『シュティフテュング・ヴァーレンテスト』においてJENA(イェーナ)というモデルが最高評価を得たほどである。このテストでは12機種の薪ストーブがテストされ、エネルギー効率、安全性、環境特性、操作性、製造技術、堅牢性が評価された。ヴァーレンテストは、ドイツでは消費者が商品を選ぶうえで重要な役割を果たしている。
さて今回の試焚は、ハーゼの最新モデルSendai175。Sendaiとはもちろん仙台のことである。ハーゼは機種のネーミングに取引のある国の地名(例えば、カルタゴ、リマ、リスボア等)を採用している。ネーミングには、地名へのこだわりではなくドイツ人の耳に聞こえる音の響きとのことだ。このSendai175に関しても同様である。
超を付けてもはばかられないほど縦長のSendai175。175とは高さ175cmを表す。Sendaiにはこの他に135、195、220という計4つのラインナップがあり、数字がそれぞれの高さを表している。ベースと燃焼室はどれも共通だが、排気ルートに蓄熱体を装填する数量によって高さが変わる。今回の175の場合は蓄熱体が18個装填されている。ちなみに135には蓄熱体が無装填である。EN13240の燃やし続ける薪ストーブながら、排気ルートに装填された蓄熱体によって室内に緩やかに熱を発するとみられるが、高さは適当ながら135には非装填であるため、今回はSendaiの特徴を活かした175を試焚したいと思う。どれほどの蓄熱力があるのか楽しみである……。

インプレッションは薪ストーブライフNo.27でご覧ください。

文:中村雅美、写真:山岡和正

薪ストーブデビュー